ジャケットの袖口には、2~4個程度ボタンが付いています。
なぜ袖口に何のためにボタンが付いているかご存知でしょうか?
ジャケットの袖ボタンのことを語る上で
まずは「ドレスシャツ」についてお話しなくてはいけません。
そもそも、洋服のルーツである英国では、
ドレスシャツはアンダーシャツ(下着)に分類されます。
日本では高温多湿な気候なので、
夏場はシャツの下に汗取りの下着を着る方も多いと思いますが、
基本的にドレスシャツは地肌に直接着るものです。
なので素材が吸水性の高い
コットンや麻などの天然素材で出来ていることが必須なのです。
最近ではクリーニングとプレスを簡単にするため、
ポリエステルを混紡し、形態安定という加工をしたものが人気ですが、
混紡することにより生地は硬くなるため肌触りは悪くなり、
吸水性も損なわれるため、本来のドレスシャツの姿ではないと感じます。
実際シャツの下に下着が透けて見えるのはかっこよくないですよね。
話を戻しますが「ドレスシャツ」=「下着」です。
なので、人前でジャケットを脱ぐということは、
下着姿で人に対面することになります。
これって当然とっても失礼なことで、
本来のルールからすれば絶対に「タブー」なことなのです。
どうしてもジャケットを脱ぎたければ、
ベストを着ることが必要です。
でも、そうはいっても手を洗ったり、
なにかしら作業するときは、
ジャケットの袖が邪魔になりますよね。
そこでタイトルの「本切羽」の出番です。
「ほんせっぱ」と呼びますが、袖口のボタンを本当に開くようにした仕様のことを言います。
別名「本開き」ともいいます。
すなわち袖のボタンをはずして、袖を捲り上げ、
ジャケットを脱がずにいろいろな作業が出来るようになっています。
もともとスーツやジャケットはオーダーメイドが当たり前であったので、
すべてこのように「本切羽」になっていたようです。
レディーメイド(既製品)のスーツやジャケットの袖口にもボタンが付いていますが、
そのほとんどは開くことはできない「アキミセ」という仕様になっています。
なぜなら、本切羽仕様に仕上るとボタンホールを開けるため、袖丈の直しが不可能になってしまうからです。
既製品の袖口のボタンは単なる飾りではなく「本切羽」の名残なんです。
オーダーメイドだからこそ出来る「本切羽」仕様。
上の写真のようにわざとボタンをはずして着ると、ちょっと粋だと思いませんか?